屈折異常(近視・遠視・乱視)

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「モノを見る」という行為は、目の中に入ってくる光が表面の「角膜」や「水晶体」によって屈折された後、網膜により電気信号に変換され、視神経を通して脳に到達することで可能になっています。

網膜に像がはっきりと映る状態、すなわち「ピントが合う」状態を「正視」といいます。
これをカメラで例えると「角膜」がレンズ、「水晶体」がオートフォーカス(ピント自動調整)機能を持ったレンズ、「網膜」がフィルムとして機能しています。

角膜や水晶体が持っている光を屈折する力に異常があり、網膜までの距離が合わないとピントが合わないと、いわゆる「ピンボケ」の状態になります。この状態を「屈折異常」といい、「近視」「遠視」「乱視」の3つに大きく分けることができます。

近視

近視とは、眼球が長い(角膜と網膜の距離が長い)ため、目に入ってきた光が水晶体による屈折で、網膜よりも手前で像を結んでしまっている状態です。これによって近くのものは見えやすいですが、遠くのものがはっきり見えなくなります。近視は「単純近視」と「病的近視」の2つに分類できます。

単純近視

「遺伝的要因」や「環境的要因」によって発症する近視です。10歳〜15歳ごろに発症し、20歳を超えたあたりで近視の進行は穏やかになる傾向にあります。手元の細かい作業や読書などにより、近くを見ることが多ければ近視が進行する可能性は高くなります。近年、スマートフォンの普及により、大人だけでなく子どもが近くを見る時間が多くなり、今後は近視人口の増加が予測されています。

病的近視

近視が進行し、度数が-6.00D以上になると「強度近視」に分類されます。強度近視は眼球の前後方向の長さが異常に伸びていることから、眼球の後方にある「網膜」や「視神経」に影響を与え、様々な病気を引き起こします。この状態を「病的近視」といい、視力矯正によっても正常な視力がなかなか出ません。

強度近視とは

遠視

遠視とは、眼球が短い(角膜と網膜の距離が短い)ため、目に入ってきた光が水晶体による屈折で、網膜よりも後ろで像を結んでしまっている状態です。近くのものがはっきり見えなくなるだけではなく、遠くも見えにくくなります。若い方は眼球に柔軟性があり、ある程度はピント調整によって、日常生活で不便を感じることは少ないです。しかし、歳を重ねる毎にピント調整能力が衰え、これを補うために自然と眼に力が入ることが遠近両方で多くなるため、遠視は眼精疲労の原因となります。

乱視

乱視とは、角膜や水晶体に歪みが生じていることにより、目の中への光の入り方に異常をきたし、網膜に正しく焦点を結べない状態です。これにより、ものが歪んで見えたり、二重に見えたりします。乱視は「正乱視」と「不正乱視」の2つに分類できます。

正乱視

正乱視は角膜や水晶体がラグビーボールのような「楕円形」に歪んでいる状態の乱視です。歪んでいる方向、傾きによって乱視の症状の現れ方は変わります。歪んでいる角膜のカーブに対して逆方向のカーブのレンズを装着し、カーブを相殺することで乱視を抑えることができるので、メガネや乱視用コンタクトレンズによって矯正可能です。

不正乱視

不正乱視は角膜の表面に不規則な「でこぼこ」や「歪み」が生じている状態の乱視です。焦点が不規則に多数できるため、不安定な見え方になります。原因としては角膜への外傷や、角膜の炎症があげられます。不正乱視の場合は、角膜の表面が均等ではないためメガネやソフトコンタクトレンズでの矯正ができず、ハードコンタクトレンズによる矯正が必要です。

屈折異常の治療法

屈折異常は自然に治ったり、放置していて視力が回復することはありません。屈折異常の矯正方法としては一般的にはメガネやコンタクトレンズの装用ですが、近年では「裸眼で見えるようになりたい」といった患者様に「屈折矯正手術」の選択肢もあります。裸眼視力回復のための屈折矯正手術には、代表的なもとして「レーシック(LASIK)」と「ICL(眼内コンタクトレンズ)」の2種類があります。

レーシック(LASIK)

レーシック(LASIK)は目の表面の角膜にレーザーを照射して、角膜の形状を変化させることで、屈折異常を矯正し、裸眼視力を回復させる手術です。手術時間は10分ほどで、早い方は手術即日で視力の回復を実感できます。また、有効性と安全性が評価され、国内ではもっともポピュラーな屈折矯正手術となっています。しかし、一度削った角膜は元に戻すことはできない不可逆な手術である点や、術後に一定の確率で「ドライアイ」「近視の戻り」が発生するなどのデメリットもあります。

ICL(眼内コンタクトレンズ)

ICL(眼内コンタクトレンズ)とは目の中に特殊なコンタクトレンズを挿入(インプラント)することで、屈折異常を矯正し、裸眼での日常生活を取り戻すことが可能な新しい屈折矯正手術です。

レーシック(LASIK)と比較されることが多いですが、ICL(眼内コンタクトレンズ)は角膜を削らない治療で、挿入したレンズは摘出すれば「手術前の状態に戻す」ことが可能な、より安全性の高い治療方法です。

コンタクトレンズのようなメンテナンスは必要なく、レンズは「コラマー」という生体適合性の高い特殊な素材で、半永久的に目の中で使用可能といわれています。

また、適応条件や矯正可能な度数の広さも特徴として挙げられ、レーシック(LASIK)に変わる屈折矯正手術として注目されています。

デメリットとしては手術のコストがレーシック(LASIK)よりも高いことや、目の中の手術(内眼手術)に伴う合併症のリスクなどがあります。

ICL(眼内コンタクトレンズ)について

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記事執筆

眼科医 吉田 稔

日本眼科学会 眼科専門医

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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