糖尿病網膜症

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糖尿病網膜症とは、糖尿病が発症要因となる網膜の疾患で、「糖尿病腎症」や「糖尿病神経症」と並んで糖尿病三大合併症と言われ、発症件数の多い病気です。

網膜には多数の毛細血管がありますが、高血糖による血流障害が起きることで、網膜の細胞に酸素や栄養が行き渡らず、視力の低下を引き起こします。

糖尿病網膜症は、日本国内において失明原因3位の目の病気であり、40代未満の若い人の発症数が年々多くなっていることが問題となっております。

糖尿病の罹病期間と目の疾患の発症率には因果関係があり、糖尿病による血糖コントロール不良状態が長ければ長いほど、網膜をはじめとするさまざまな目の組織に障害が起きます。進行性の病気で、初期段階ではほとんど自覚症状がないため、発見が遅れ、重篤化する恐れがあります。

早期発見のため糖尿病を患っている方は定期的な眼底検査が必要になります。

罹病期間が長いほど発症率も高く、血糖コントロール不良状態が長期(5年から10年ぐらい)にわたると多くの場合、網膜をはじめ眼組織にさまざまな障害を起こします。
眼科的に異常を認めない場合でも半年から1年ごとに眼科受診を心がけてください。 糖尿病網膜症は「単純」「増殖前」「増殖」の病期に分けられ、それぞれの時期で治療が変わります。
また、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」はすべての時期で起こることがあります。

糖尿病網膜症は進行の度合いによって「単純」「増殖前」「増殖」という3つの病期に分類され、それぞれの段階に応じて治療法が異なりますので、それぞれ解説します。

糖尿病網膜症の原因

糖尿病を患うことで細胞が血液中の糖分を通常どおり吸収できなくなり、血液の高血糖状態が続くと、血管へ様々な障害が生じて、細胞へ必要な酸素や栄養が行き届かなくなります。

特に網膜は視機能にとって重要な血管が密集していることもあり、高血糖による血流障害が起き、網膜の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなり、視力へ影響を及ぼします。

また、酸素や栄養を届けるために新しい血管(新生血管)が作られますが、新生血管は脆く、破れて眼内に広く出血する硝子体出血が引き起こり、これも糖尿病網膜症の症状の原因となっています。

単純糖尿病網膜症

糖尿病網膜症の初期の段階です。
血管が盛り上がって血管瘤(毛細血管瘤)や血管から漏れ出したタンパク質や脂質がシミ(白斑)の出現、僅かな眼底出血などの異常がみられます。

視力への影響はほとんどなく、自覚症状がないケースがよくあります。
経過観察のみで、治療は必要ありませんが、血糖値のコントロールにより改善することができます。

増殖前糖尿病網膜症

単純糖尿病網膜症の次の段階です。

小さな眼底出血だけでなく、網膜の細胞に酸素や栄養が十分に供給されない状態(虚血変化)が起こります。
視力が低下しないことも多く、自覚症状がない場合があります。

放置すると増殖糖尿病網膜症に移行する可能性が高いため、レーザー治療をおこなう必要があります。

増殖糖尿病網膜症

高血糖による血流障害が起き、網膜の細胞に酸素や栄養が行き渡らなくなったことにより、酸素や栄養を届けるために新しい血管(新生血管)が作られます。
しかし新生血管はもろいので、これが破れて眼内に広く出血することがあります(硝子体出血)。
また、新生血管の周りには増殖膜ができ、これが網膜を引っ張って牽引性網膜剥離も引き起こすことがあります。
さらに新生血管が虹彩にまで生じ、房水(眼圧を維持する役割をもつ液体)の生成と排出のバランスが取れなくなることで、正常な眼圧が維持できず血管新生緑内障が発症することもあります。

レーザー治療だけでなく硝子体手術が必要なケースがあります。
血管新生緑内障が発症した場合には、点眼治療や眼圧を下げる緑内障手術が必要となることがあります。

網膜硝子体手術について

記事執筆

眼科医 吉田 稔

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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