黄斑前膜(黄斑上膜)

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黄斑前膜は、目の中でカメラのフィルムのような役割を担う「網膜」の中心部分にあたる「黄斑部」の前面にうすい膜(前膜)が張る病気です。また、黄斑上膜やセロファン黄斑症とも呼ばれています。

網膜の疾患の中では最も発症数が多い病気で、40歳以上の人は20人に1人のほどの確率で発症するといわれています。他の網膜の疾患とは異なり、基本的には失明に至らない病気ではありますが、進行すると見え方に支障をきたします。

黄斑前膜は緩やかに進行する場合が多く、通常は失明の危険性が少ないので、定期検査による経過観察をすることがほとんどです。

黄斑前膜(黄斑上膜)の症状

初期の段階では自覚症状がほとんどありません。進行に連れて膜が収縮してしまい、網膜が浮腫んでシワが寄ります。このシワによって、モノが歪んで見えたりと視力に影響を及ぼします。

黄斑前膜(黄斑上膜)の原因

眼球内はゼリー状の硝子体という物質で満たされており、硝子体は網膜にも接しています。
硝子体は加齢に伴い収縮して網膜から離れていきますが、その過程で網膜の表面に残った硝子体の細胞が増殖し、これが膜を形成することによって起きます。

黄斑前膜(黄斑上膜)の治療・手術

黄斑前膜の進行は遅いため、すぐに失明するなどの心配はありませんが、症状が進行し視力に影響が出てくるとを「硝子体手術」を検討する必要があります。

硝子体手術では、白目に1mm以内の穴を3か所程度開けて、硝子体を取り除いた後に、網膜の表面に張り付いている黄斑前膜をピンセットで丁寧に取り除きます。1mm以下の薄い膜を網膜に傷を付けないように摘出する手術なので、術者には精密さを要求されます。

また、黄斑前膜は加齢に伴って発症する疾患であり、同じ加齢が原因となる白内障も進行している可能性が高いです。その場合は硝子体手術と同時に白内障手術も行われることがあります。

また、黄斑上膜と網膜が強く癒着している場合は、手術中に上膜を剥がすと黄斑に穴(黄斑円孔)が開いてしまうことがあり、手術終了時に硝子体スペースにガスを注入することがあります。

網膜硝子体手術について

記事執筆

眼科医 吉田 稔

日本眼科学会 眼科専門医

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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