白内障手術の再手術(眼内レンズの交換・入れ換え手術)について

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白内障の再手術(眼内レンズの交換・入れ換え手術)について

現在、白内障手術の安全性が確立されるとともに、高齢化社会による白内障手術の実施件数の増加により、多くの眼科施設で日帰り白内障手術が実施されています。
白内障手術で、水晶体の代わりに挿入する眼内レンズ(単焦点・多焦点眼内レンズ)の寿命は人の寿命よりも長いことから半永久的に使用できるため、基本的にはレンズの摘出や交換の心配はありません。
一方、白内障手術後に何かしらの理由で再手術(眼内レンズの交換や入れ換え)を検討や希望される患者様も増えています。
これまで日本有数の眼科専門病院で長年勤務し、現在当院院長を務めている吉田稔医師の眼科医としての豊富な経験を元に、これらの理由や対応方法について解説していきます。

白内障の再手術(眼内レンズの交換・入れ換え手術)を検討するケース

白内障の再手術(眼内レンズの交換・入れ換え手術)をを検討する理由として主に「白内障手術の再手術が必要となるケース」と「患者さまが白内障手術のやり直しを希望される場合」の2種類があります。

再手術が必要なケース

  • 眼内レンズがズレてしまった(=亜脱臼)
  • 眼内レンズが目の中に落ちてしまった(=脱臼

上記のような場合、眼内レンズの摘出、交換を行います。
※交換せずにそのまま挿入中のレンズを固定し直す場合も有り

患者様がやり直しを希望される場合

  • 白内障手術を既に受けているが、裸眼での見え方をより良くしたい方
  • 眼科医から眼内レンズの十分な説明を受けておらず、希望の見え方と異なってしまった方
  • 白内障の手術後に屈折異常(近視・遠視・乱視)が残ってしまい、メガネが必要になってる方
  • 単焦点眼内レンズを挿入したが、多焦点レンズにしたい方
  • 多焦点眼内レンズを挿入したが、度数計算のズレにより期待した視力にならなかった方

上記のように挿入した眼内レンズのミスマッチが、患者さまがやり直しを希望される理由の大半です。

このような場合には
・違う種類の眼内レンズへの交換
・タッチアップ(LASIK)
・AddOn IOL(アドオン眼内レンズ)
が治療方法の選択肢として挙げられます。

眼内レンズの亜脱臼・脱臼のよる摘出・交換

眼内レンズがズレたり(=亜脱臼)、目の中に落ちた(=脱臼)場合は再手術が必要になります。

原因

眼内レンズの脱臼や亜脱臼の原因の大半は、水晶体を支えるチン小帯という細い多数の繊維が、加齢や外傷などによって断裂することによって、眼内レンズを支えられなくなることが原因として挙げられます。

治療方法

レンズのズレが小さければ見え方に影響は殆どないので気づかないですが、ズレが大きいと見え方に悪影響を及ぼします。
目の奥に落下してしまった場合には、視力低下だけではなく、網膜や視神経に傷がついてしまう恐れがある為、手術を余儀なくされます。

手術方法としては
①レンズを摘出
②新しいレンズを挿入、固定
を行います。
※交換せずに元のレンズをそのまま固定する場合もあり

固定方法には
眼内レンズに縫合糸を用いて強膜(目の一番外側の膜)へ縫い付けて固定する「逢着術」と、
眼内レンズの支持部を強膜内に作製した極小の孔へ直接埋め込んで固定する「強膜内固定術」の2種類の方法があります。
逢着術は縫合糸が細いことから、経年劣化によって糸が千切れてしまうなどして、再びレンズのズレや落下の可能性がある為、現在では強膜内固定術が主流となっています。
強膜内固定術では、眼球内を満たしている硝子体と呼ばれるゼリー状の物質の処理が必要になることが大半なので、硝子体手術と同時に行います。

網膜硝子体手術について詳しくはこちら

眼内レンズのミスマッチによる見え方の改善・治療方法

前述のように、術後の眼内レンズのミスマッチによる見え方への不便性から、白内障手術のやり直しを希望される患者さま数が増えています。
国内の手術件数の増加や眼内レンズの多種多様化に伴い、術後の不具合や眼内レンズの不一致が一定数起こってしまうのは致し方ないですが、患者様としては見え方によってQOL(生活の質)に影響が出てしまうので、改善のご希望・ご相談は少なくありません。
術後の見え方に不便性がある場合、対処療法としてメガネやコンタクトレンズの使用による視力矯正がありますが、裸眼での見え方を改善するには、再手術の検討が必要になります。
治療方法としては次の3つの選択肢があります。

眼内レンズの交換

眼内レンズの交換

眼内レンズは手術による交換が技術的には可能です。
しかし、術後はレンズが水晶体嚢に癒着しているため、眼内レンズを摘出する際に合併症を起こしてしまうリスクがあります。
癒着するまでの期間は眼内レンズの素材や種類によって異なりますが、一般的には挿入後1ヶ月ほどでレンズと水晶体嚢(眼内レンズを覆う袋)が癒着する可能性が高くなります。
眼内レンズを交換する場合は癒着するまでの期間や目の状態を考慮し、術後の早い段階で再手術を行う必要があります。

レーシック(LASIK)によるタッチアップ

レーシック(LASIK)によるタッチアップ

白内障後に残ってしまった屈折異常(近視・遠視・乱視)をレーシック(LASIK)によって治療することを「タッチアップ(LASIK)」といいます。
タッチアップとは、身近な物であればタッチアップペン(修正ペン)などがあるように「小さな修正」を意味しています。
レーシック(LASIK)は矯正する度数の微調整が可能で小さな度数の修正を得意領域とされていることから、白内障手術後の屈折矯正に選択肢として挙げられます。
しかし、十分な角膜の厚さがないと手術ができない等の適応条件があり、一度削った角膜は元に戻せない「不可逆な手術」などのレーシック特有のデメリットもあります。
※当院では、現在設備上の問題からレーシック手術は実施しておりません。
レーシックをご希望の場合は、提携先の医療機関へご紹介させていただきます。
当院院長は、前任地においてレーシックの治療実績が多数あり、幅広い知見を有しておりますので、どちらの治療が適しているかお悩みの方もお気軽にご相談ください。

メリット

  • 白内障手術後の屈折異常を矯正できる
  • メガネや老眼鏡が必要だった方も裸眼で見えるようになる
  • 他の治療方法と比べて低コストで屈折異常を矯正できる
  • 手術時間が短く、痛みも少ない
  • 安全性・有効性の高さ

デメリット

  • 角膜は一度削ってしまうと戻せない
  • 術後に近視の戻りが起こるケースがある
  • ハロー・グレアの症状が現れることがある
  • 一時的にドライアイが発症することがある
  • 手術への適応条件がいくつかある

AddOn IOL(アドオン眼内レンズ)

AddOn IOL(アドオン眼内レンズ)

従来では白内障手術後の屈折異常の矯正は「眼内レンズの交換」や「タッチアップ」が主流でしたが、近年では「AddOn IOL(アドオン眼内レンズ)」という新しい屈折矯正治療が登場し、注目されています。
AddOn IOL(アドオン眼内レンズ)とは、眼内レンズの交換に対して、白内障手術後の眼内レンズを摘出することなく追加で挿入して、屈折矯正を施すことができる新しい眼内レンズになります。
眼内レンズをもう1枚追加し、2枚目のレンズが挿入されている状態にすることで、白内障の手術後に残った屈折異常を矯正し、裸眼での見え方をより良好にすることができます。
また、一度削った角膜は元に戻せない不可逆的なタッチアップ(レーシック)と比較し、万が一の場合は摘出が可能な「可逆性の高い手術」となります。
※Add Onは、保険適用外となり、完全自己負担の自由診療となります。
※患者様の目の状態によっては、眼内レンズを交換する方法やタッチアップ(レーシック)をおすすめさせて頂く場合があります。

メリット

  • 白内障手術後の屈折異常をレンズを摘出せずに矯正できる
  • メガネや老眼鏡が必要だった方も裸眼で見えるようになる
  • 角膜を削ることで見え方の質に影響が出るレーシックと比べ見え方の質が良好
  • 万が一の場合は摘出し、手術前の状態へ戻すことが可能

デメリット

  • 保険適用外の自由診療
  • 多焦点眼内レンズのようにハロー・グレアの症状が現れることがある
  • 屈折異常(近視・遠視・乱視)を完全に矯正できず、場合によっては屈折異常が残ることがある
  • 自然な見え方になるまで長ければ半年ほどかかる

当院の手術について

当院では眼内レンズの交換・摘出およびAddOn IOL(アドオン眼内レンズ)に対応しております。

全ての手術の執刀は院長の吉田稔医師が行います。
当院院長は眼科専門病院で長年従事し、白内障手術は勿論、多焦点眼内レンズやアドオン眼内レンズ、屈折矯正手術(レーシック等)のそれぞれに深い知見を有しているので、患者様の白内障手術後のお悩みに対しベストな治療方法をご提案させていただきます。

白内障手術後の見え方でご相談がある方はお気軽に当院へお問い合わせくださいませ。

記事執筆

眼科医 吉田 稔

日本眼科学会 眼科専門医

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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