5焦点眼内レンズ-Intensity(インテンシティ)

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多焦点眼内レンズは白内障手術時に用いられるレンズの1種で、手術では濁った水晶体を摘出し、代わりに「眼内レンズ(単焦点・多焦点眼内レンズ)」を挿入します。
当初は単焦点眼内レンズが一般的でしたが、「メガネや老眼鏡の装用機会を減らしたい」という患者さまのご要望から「多焦点眼内レンズ」が登場しました。
現在は2焦点眼内レンズから3焦点眼内レンズ、焦点深度拡張型レンズまで多種多様なレンズが開発され、多焦点眼内レンズがより身近な選択肢となりました。
これによって白内障手術後の「より良い見え方の追求」を目的として眼内レンズの開発が進み、2019年には世界初の「5焦点眼内レンズ」が登場しています。

当院でも5焦点眼内レンズのINTENSITY(インテンシティ)を取り扱い、患者さまのライフスタイルに合わせてご提案を行っています。
この記事ではインテンシティを従来の眼内レンズと比較しながら、メリット・デメリットについて解説します。

5焦点眼内レンズ-INTENSITY(インテンシティー)とは

5焦点眼内レンズ-Intensity(インテンシティ)

INTENSITY(インテンシティ)とはHanita Lenses社(イスラエル)製の回折型の5焦点眼内レンズです。
従来の多焦点眼内レンズの「近方」「中間」「遠方」に加え、「遠中」「近中」も含めた5つの焦点距離を併せ持つ眼内レンズで、新しい技術が採用されています。
5焦点眼内レンズによって、日常生活のあらゆるシーンで妥協なく、裸眼での良好な見え方を実現することができるようになりました。
英語の「intensity」は「強さ」や「鮮やかさ」を意味し、その名の通り「他の眼内レンズと比較して強みが多い」、「鮮やかな見え方」といった特徴があります。
現状の眼内レンズの中では最もメリットを享受できるといっても過言ではないほど、画期的な眼内レンズです。
5焦点眼内レンズ-インテンシティーは2019年にヨーロッパで「CEマーク*」を取得し、日本では2020年9月より、「自由診療」にて取り扱いが開始されました。
*ヨーロッパで安全基準をクリアした製品に与えられる商号

他の眼内レンズとの比較

単焦点眼内レンズ 2焦点眼内レンズ 3焦点眼内レンズ 5焦点眼内レンズ
焦点距離 遠・中・近
のいずれか1つ
遠・中・近
のいずれか2つ
遠・中・近 遠・遠中・中・近中・近
メガネの使用頻度 高い 少ない ほとんどない ほとんどない
見え方の質 高い 高い やや低い 高い
ハロー・グレア 少ない あり やや少ない ややあり
夜間の見え方 良好 見えにくい やや見えにくい 良好


白内障手術で水晶体の代わりに挿入する眼内レンズには、ピント(焦点)が「近方」「中間」「遠方」いずれか1点のみに合う「単焦点眼内レンズ」を一般的に用います。
焦点を合わせた距離以外を見る際にはメガネの装用が必要になりますが、焦点を合わせた距離でモノを見るときには鮮明に見ることができます。

一方「多焦点眼内レンズ」は、2箇所以上にピントを合わせることができる眼内レンズで、白内障手術後もほとんどの場面でメガネが不要となることが最大のメリットとなります。
一般的な回折型2焦点・3焦点多焦点眼内レンズでは、複数距離に焦点を合わせるために複雑な構造を有している為、単焦点眼内レンズと比較して、「コントラスト感度(見え方の質)の低下」やハロー・グレアといった光の見え方に違和感を覚える「光視症」がデメリットなります。

対して、5焦点眼内レンズのインテンシティーは多焦点眼内レンズで享受できるメリットを最大化し、特有のデメリットを軽減していることから、バランス性能が非常に優れている眼内レンズです。
次項ではどういう点が優れているのか具体的なメリットについて解説します。

5焦点眼内レンズ-INTENSITY(インテンシティー)のメリット・デメリット

5焦点眼内レンズ-INTENSITY(インテンシティー)のメリット・デメリット

一般的な多焦点眼内レンズは、目に入ってくる光をレンズ内の段差(同心円状に階段状)によって振り分けることで、複数の焦点距離にピントを合わせることができる回折構造が採用されています。
対して、インテンシティーは光化学に基づき新しく計算された「DLU(Dynamic light utilization technology)」という独自の回折構造が取り入れられています。
これにより、従来の回折型2焦点・3焦点眼内レンズでは使用できなかった領域を使用可能にし、5つの焦点へのピント調整が可能になっています。
このアルゴリズム(計算方法)はHanita社独自で開発された新しい技術です。
Hanita社の拠点であるイスラエルはサイバーテクノロジーの分野において、最新技術の発信元として、世界的に高い技術力が認められている国でもあります。

INTENSITY(インテンシティー)のメリット

5つの焦点にピントを合わせることができるのは勿論、従来の回折型2焦点・3焦点眼内レンズのデメリットが軽減されていることがメリットとして大きいでしょう。

日常で必要な焦点距離を幅広くカバー

日常で必要な焦点距離を幅広くカバー

「近方」「中間」「遠方」に加え、「遠中」「近中」も合わせた5つの焦点距離へのピント調整が可能になったことにより、日常生活においてあらゆるシーンで妥協なく、裸眼での良好な見え方を実現することができます。
また、従来の2焦点・3焦点眼内レンズでは近方が50cmほどで設定されているものが多く、手元の視力が落ち込むことがありました。
しかし、近方40cmで設定されてるインテンシティーは手元の視力低下が軽減されており、スマートフォンや新聞などの手元の活字も読みやすくなっていることもメリットの1つです。

見え方の質が高い

見え方の質が高い

目に入ってくる光を振り分けることで複数に焦点を合わせることができる多焦点眼内レンズの回折構造ですが、 光を振り分ける際に光エネルギーのロス(光学的エネルギーロス)が発生するため、コントラスト感度(見え方の質)が低下します。
例として、回折型の2焦点眼内では、遠方に41%、近方に41%を振り分け、その結果18%の光学的エネルギーロスが発生しています。
基本的には、光の振り分け先(焦点距離)が増えるにつれて光学的エネルギーロスが増えますが、インテンシティーは独自の構造によって光学的エネルギーロスが「約6.5%」に抑えられています。
これにより、インテンシティーは他の多焦点眼内レンズに比べ、「見え方の質が高い」こともメリットとして大きいです。

夜間でも良好な見え方を実現

夜間でも良好な見え方を実現

従来の多焦点眼内は、夜間に視力が落ち込むことがありました。
暗いところでは瞳孔径(黒目の大きさ)が変わってしまうため、多焦点眼内レンズの光配分機能が適切に働かないことが理由です。
しかし、インテンシティーは独自のテクノロジーによって、瞳孔径の大きさごとに光配分が適切に機能するように設計されていることから、暗所や夜間でも良好な視界を得ることができます。

ハロー・グレアを最小限に抑える

ハロー・グレアを最小限に抑える

従来の多焦点眼内レンズは構造上、ハロー(光のにじみ)・グレア(光が眩しく感じる)などの光視症の出現がデメリットとして挙げられます。
しかし、インテンシティーはこれらの光視症が最小限に抑えられていることもメリットです。
実際、比較的光視症が少ないと言われる「3焦点眼内レンズ」と比較しても、ハローが少ないです。
前方車のテールライトや信号機の光も気にならないので、夜間のドライブや外出が多い方に向いているでしょう。

INTENSITY(インテンシティー)のデメリット

従来の多焦点眼内レンズと比較し、患者さまが「最もメリットを享受できる」と言っても過言ではないインテンシティーですが、デメリットが0というわけではありません。
デメリット次第で、インテンシティーを選択するのに向いていない患者さまもいらっしゃるので、デメリットにも目を向けて総合的に判断することが大切です。

強度近視の方は不適応になる場合がある

レンズのパワーレンジ(矯正度数の幅)が狭いため、強度近視(-6.0D以上)の場合、レンズが不適合となることがあります。

40cm以下の近方での視力の落ち込み

他の多焦点眼内レンズと比べ、近方の視力の落ち込みが少ないことがメリットであるインテンシティーですが、40cm以下の近方での視力低下は避けられません。
そのため、手元の精密な作業や細かい文字を読む機会が多い方にはおすすめできません。

高額な費用

健康保険が適用されない「自由診療」になります。
他の多焦点眼内レンズと比較してもレンズ価格が高額です。

5焦点眼内レンズ-INTENSITY(インテンシティー)見え方

従来の眼内レンズの「遠方」「中間」「近方」に加え、3焦点眼内レンズではカバーできなかった「近中」「遠中」も合わせた5つの焦点距離にピントを合わせることができるので、どの焦点距離間でも「シームレスに見える」ことができます。

5焦点眼内レンズ-INTENSITY(インテンシティー)の費用

5焦点眼内レンズ(インテンシティ) 300,000円(税込)
5焦点眼内レンズ(インテンシティ:乱視用) 330,000円(税込)

※5焦点眼内レンズ「Intensity(インテンシティ)」は自由診療となり、保険適用外となります。
※上記片眼の費用になります。
※上記レンズ代に加え、手術代金250,000円(税込)がかかります。

まとめ

最新技術の発信元であるイスラエルで生み出された5焦点眼内レンズのインテンシティーは、独自の技術によって他の眼内レンズにはない特性を持っています。
多焦点眼内レンズで享受できるメリットの最大化、デメリットの大幅な軽減により、非常にバランス性能に優れた眼内レンズです。
白内障手術後も「見え方の質に拘りたい」「どんな時でも妥協なく裸眼で過ごせるようになりたい」といった患者さまへおすすめできます。
しかしながら、この眼内レンズが必ずしも最善な選択肢とは限りません。
患者様によっては他の眼内レンズの方がQOL(生活の質)を高めることができる場合もあり、よりライフスタイルに合ったものを選ぶために、それぞれの眼内レンズの特徴を理解することも大切です。
当院では白内障手術に精通し、多種多様な眼内レンズの特性をそれぞれ把握している医師だけでなく、スタッフによる慎重なヒアリングを通じて、患者様のご希望やライフスタイルに合わせた眼内レンズを提案いたします。
白内障手術をご検討中の方や術後の見え方をより良くしたい方、眼内レンズ選びにお困りの方はぜひ当院へご相談ください。

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受付時間 9:30 – 12:30 / 16:30 – 19:00

記事執筆

眼科医 吉田 稔

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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