白内障手術を受けるデメリット・リスクについて眼科医が徹底解説

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白内障手術のデメリット・リスクについて

物が見えにくい、かすんで見える、まぶしい、ダブって見えるなどの症状が最近現れた方は注意が必要です。
これらは白内障の症状であり、白内障が進行すると近視化や乱視化することがあり、それに伴い今使っている眼鏡が合わなくなることがあります。

白内障手術は視力の矯正が期待できますが、手術にはどのようなデメリットやリスクがあるのでしょうか。
本記事では、白内障とは?という基本的なところからメリット・デメリット、合併症についてを眼科医が詳しく解説します。

白内障手術ってどんな手術?

白内障手術ってどんな手術?

まず白内障とは、加齢、糖尿病などの全身疾患、ステロイドなどの薬の副作用、外傷などが原因で、眼の中の水晶体(カメラで例えるとレンズ)が濁り、その結果として光が眼の中に入りにくくなり、視力が低下し、かすんで見えたり、まぶしく感じたり、片眼で物が二重に見えるといった症状が現れます。
この症状を放置すると進行し、日常生活に支障をきたすことがあります。

白内障によって引き起こされる視力低下などのさまざまな症状を改善するために、白く濁った水晶体を除去し人工レンズ(眼内レンズ)を挿入する手術を白内障手術といいます。

白内障手術を受けるメリットは?受ける時期は?

白内障手術を受けるメリットは?受ける時期は?

白内障手術によって、物が見えにくかったり、かすみ、まぶしさ、ダブって見えるといった症状の改善が主なメリットとしてあげられますが、これに加えて他にも複数のメリットがあります。

1.視力の改善

白内障手術は濁った水晶体を取り除き、透明な人工のレンズ(眼内レンズ)に置き換えることで視力の改善が期待されます。
かすみやまぶしさなどの白内障による症状も改善されます。

また、それだけでなく、水晶体の代わりに挿入される「眼内レンズ」によって、近視や乱視などの「屈折異常」や「老眼」といったお悩みを改善する機会となります。
水晶体によるピント調整機能はなくなりますが、挿入する眼内レンズの選択によって、患者様一人ひとりに合った老後のライフスタイルに合わせた視力の調整が可能です。

2.生活の質の向上

白内障は進行が遅いため、多くの人が症状に気づかずに見えにくくなります。
手術によって視界が明瞭になり、見えるようになることで、患者様のストレスが軽減されます。これにより、心身の健康が改善し、生活の質が飛躍的に向上することが期待されます。

3.他の眼の疾患に対して正確な診断と予防が可能に

白内障の程度が強いと、水晶体が白く濁っているため、眼底(目の奥)が見えにくくなることがあります。眼底が見えにくいと、医師は目の病気の判断が難しくなります。
白内障手術を受けることで、眼底の状態を正確に診察し、白内障以外の眼の疾患があれば、適切な治療が可能になります。

また、白内障手術は閉塞隅角緑内障など、房水の流れが滞る状態を改善し、眼圧を下げるのにも寄与します。
白内障は緑内障を引き起こす可能性があるため、白内障手術を受けることで緑内障の症状の緩和や予防が期待できます。

4.一度手術を行うと再発がない

白内障手術を行うと、白内障の元となる水晶体は完全に取り除かれ、眼内レンズに置き換えられるため、水晶体による白内障が再発する可能性はありません。
ただし、残った細胞が増殖し、視界がかすむなどの症状が現れることがあります。
これは再発ではなく、「後発白内障」と呼ばれる別の目の疾患です。この症状はレーザー治療によって改善することができます。

白内障手術を受ける時期について

基本的な目安は、ご自身のものの見え方に満足できなくなり、日常生活に支障が生じたときです。
具体的な数字で表すと、視力が0.6以下になったあたりです。ただし、0.6以上であっても、まぶしさを強く感じるなど、ご自身の生活の質に問題が生じる場合は手術を検討すべきです。
そのため緊急を要して、白内障手術を受ける方は少なく、手術の適切なタイミングを決めるには通常、充分な時間的余裕があります。

その他に手術のタイミングを考えるタイミングとしては、職業的な問題も考慮に入れる必要があります。
例えば、運送業のような運転がメインとなる職業の場合、白内障により夜間の運転でライトがまぶしく前が見えにくくなると、安全運転に支障が生じます。このような場合は、早めに対処することが重要です。適切な手術のタイミングがわからない方や、これから手術を検討されている方は、一度、眼科医に相談をしましょう。

また、手術を受ける年齢によっては費用が異なる場合があります。

白内障手術の費用について

一般的な手術の費用について解説します。白内障手術の費用は、医療保険の負担額や眼内レンズの種類によって異なります。
下記の表はあくまで目安として参考にしてください。

単焦点レンズ 多焦点レンズ
医療保険の負担割合 1割の方 2割の方 3割の方 1割の方 2割の方 3割の方
手術費用の目安 約2万円 約4万円 約6万円 約2万円+19万円〜 約4万円+19万円〜 約6万円+19万円〜

 

また、手術費用に関しては、「高額医療費制度」という仕組みがあり、1ヶ月間(1日から末日)の医療費が高額となった場合に、一部が払い戻される仕組みです。
負担上限額は年齢や所得によって異なります。高額療養費制度のご利用をご検討の方は、厚生労働省のホームページの「
高額療養費制度を利用される皆さまへ」より詳細をご確認ください。

白内障手術にデメリットはある?

白内障手術にデメリットはある?

白内障手術には多くのメリットがありますが、同時にいくつかのデメリットも存在します。
実際には心配する必要はほとんどありませんが、手術を考えている方は、術後に後悔しないためにデメリットについても正しく把握しておきましょう。

1.眼鏡が必要になる場合が多い

白内障手術後も通常は眼鏡が必要になります。手術で使用される眼内レンズは一般的に「単焦点レンズ」であり、ピントが1つの距離に合わせられます。
老眼の場合、調節力が制限されるため、ピントが合うのは1点だけです。

そのため、老眼の患者様にとっては、手術前後で視力の調節に大きな変化はないかもしれません。
ただ、近視が強い場合、適切な眼内レンズを選ぶことで遠くも見やすくなります。手術後、適切な眼鏡を使用すると、視力が向上し、生活の質が向上することがあります。

遠近両方を眼鏡なしで見たい方には、「多焦点眼内レンズ」という選択肢もあります。
「単焦点眼内レンズ」は1点にピントが合いますが、多焦点眼内レンズではさまざまな距離にピントを合わせることができるため、眼鏡がなくても広い視野で手元から遠くまで見ることができます。

レンズによる見え方の違い

ピントが合う距離 特徴 眼鏡 見え方 保険
単焦点レンズ 1ヶ所 視野が狭く、手元または遠くのいずれかしかピントが合わない 必要 多焦点眼内レンズと比べて優れている 適用
多焦点レンズ 複数 広い範囲が見え、手元から遠くまで視覚が可能 不要 単焦点レンズと比べるとやや劣る 適用外

手術代は保険適用、眼内レンズ代は保険適用外

 

使用するレンズにはそれぞれメリット・デメリットがありますので、患者様の生活スタイルやご要望に合わせてご相談の上、選択いたします。また、手術後も眼鏡が必要になる場合もありますが、白内障手術は老眼に対しても視力の改善を望め、日常生活がより快適になります。

2.稀だが手術が1度で終わらない場合がある

通常、白内障手術は1回で完了しますが、稀稀に手術中の状況により追加の処置が必要となることがあります。
ただし、これは極めて稀であり、現代の医療技術の進歩により、ほとんどの場合は1回の手術で終えることができます。

3.人工レンズの調整や交換の可能性

眼内レンズは生体に安全な樹脂で構成され、通常は半永久的に使用可能です。したがって、特に理由がない限り、レンズの交換は滅多に行われません。
以前、あるメーカーのレンズでは水滴やカルシウムの沈着による濁りが報告されましたが、現在は改善され、問題の報告はありません。
レンズの劣化を防ぐためには、適切なレンズの選択が重要であり、当院では患者さんの生活スタイルに合わせて丁寧なカウンセリングを行い、適したレンズを選択しています。

白内障手術後は通常、メンテナンスが必要ありませんが、「後発白内障」が発生する場合にはレーザー治療が必要なことがあります。

また、眼内レンズの度数は事前の検査で調整・確定されますが、時折、挿入後に度数がズレることがあります。選んだ眼内レンズが希望通りの見え方にならない場合もあります。
この度数のずれやミスマッチは生活に大きなストレスを与える可能性があります。小さなずれにはレーシック(LASIK)でのタッチアップが行われます。
大きなずれや違和感がある場合は、レンズの交換手術が考慮されます。最近では「アドオン眼内レンズ」も登場し、当クリニックでも取り扱っています。

このアドオン眼内レンズは、通常の白内障手術で挿入される眼内レンズ(IOL)の上に、追加で別のレンズを取り付けて視力を調整するためのもので、手術後に度数の微調整や希望の視力に適した状態に調整するために使用されます。

白内障手術では、患者様の眼に人工の眼内レンズが挿入され、通常はその時点で度数が確定されます。しかし、希望通りの視力が得られない場合や、後から変更が必要な場合があります。
アドオン眼内レンズは、これらのケースで追加の調整が可能なオプションとして使用されます。

アドオン眼内レンズについては、「白内障手術の再手術(眼内レンズの交換・入れ換え手術)について」を参考にしてください。

4.起きうるリスク・合併症について

どんなに優れた手術であっても合併症のリスクが伴います。
これを最小限に抑えるためには、滅菌や消毒に留意した手術環境の保持と、慎重な術後ケアが欠かせません。

以下に、主な合併症や白内障手術後に発生する可能性のある事例を挙げます。

  • 術後眼内炎
    白内障手術後、最も警戒すべきは感染症の一種である「眼内炎」です。
    切開創からの微生物侵入によりリスクが極めて低い(約0.02%)ものの、早期発見であれば点眼や内服薬で処理可能であり、緊急の手術が必要な場合もあります。
  • 眼圧の上昇
    白内障手術後、一時的な眼圧上昇が発生することがあります。
    これは点眼や内服薬で対処可能ですが、まれに緑内障が発症し、緑内障手術が必要な場合もあります。
  • 飛蚊症
    水晶体濁りにより、手術後の視力回復によって初めて気づくことがある「飛蚊症」も注意が必要です。これは硝子体の老化によるもので、発症時には検診を受けることが重要です。
  • 眼内レンズの亜脱臼・脱臼
    手術後に挿入された眼内レンズが理由によりズレる(亜脱臼)または落下する(脱臼)ことがあります。
    眼内レンズを支えるチン小帯が劣化することが原因で、再手術での固定が必要となります。

十分な手術後のケアと定期的な検診を受けることで、リスクをより低減することが可能です。
当クリニックでは患者様の安全と安心を最優先にし、万全のケアを心がけています。

まとめ

まとめ

白内障手術は、水晶体が濁りが原因で視界が悪くなったり、まぶしさを感じてしまうなどの症状を、人工のレンズ(眼内レンズ)を挿入することで、改善させる手術でした。
保険診療で手術を受けることもできますし、選択療養や完全自費診療によってレンズを選択することもできます。手術費用に関しては、高額医療費制度を利用できました。

また、視力が改善し、生活の質が向上する上、さらに他の目の疾患までも予防が可能になるという大きなメリットを享受できる反面、再手術の可能性や失明、感染症といったリスクについても正しく理解することが大切です。
ただ、十分な手術後のケアと定期的な検診を受けることで、リスクをより低減することが可能です。当クリニックでは患者様の安全と安心を最優先にし、万全のケアを心がけています。

白内障手術は確立された安全性を誇り、手術自体の失敗(=失明)は極めて稀と言えます。
しかしながら、現代においては白内障手術が「見え方の悩みを改善する手術」や「老後の見え方を追求する手術」として位置づけられ、医療機関には術前術後のサポートやケアがますます求められています。
ほとんどの人が将来的には白内障手術の検討をすることになるでしょう。
特に以下の3点については細心の注意が必要です。

  • 適切な手術時期
  • 眼内レンズのマッチング
  • 信用できる医療機関の選定

白内障手術を検討中の方や、「見えにくいさ・かすみ・まぶしさ」などの症状がある方は、ぜひ一度当クリニックを受診し、お気軽にご相談ください。
白内障手術に関する詳細な情報や相談を希望する方は、お電話・web予約・公式LINEからご予約いただけます。ご家族の方もぜひご一緒にご来院いただければと思います。

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記事執筆

眼科医 吉田 稔

日本眼科学会 眼科専門医

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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