小児眼科

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小児眼科では、病気になった目を治す眼科診療とは異なり、発達過程にある子どもの目が正常に機能するようにサポートすることが主な目的となります。特に小さな子どもの場合、目に異常があっても自覚症状をうまく伝えることができず、病気を見過ごしてしまったり、発見が遅れてしまうことがあります。日頃から子どもの日常生活に気を配り、小さな異常でも気になることがあったらすぐに受診することをおすすめします。

子どもの視力は生後から6歳ごろにかけて発達していきます。
実際に3,4歳ごろで全体の71%、5歳を超えると83%が視力1.0に達し、9歳ごろには発達が止まると言われています。
この発達期間に近視などの屈折異常があると、視力の悪いまま発達が止まってしまい、大人になっても視力が回復することはありません。

良好な視力の発達のためには早期に適切な治療が重要となりますので、眼科施設での定期的な診察や検診によるお子様の目の状態の把握が大切になります。
当院では小児特有の目の病気である「弱視」や「斜視」をはじめとした小児眼科の診療を行っていますので、子どもの目の状態で気になることがありましたら、大阪市港区のよしだ眼科クリニックまでご相談ください。

斜視

人がものを見るときに通常は、両眼が対象物の方向に揃いますが、斜視の症状がある場合は片方の目が対象物とは違う方向を見ている状態となります。斜視は子どもの2%くらいにみられる小児眼科の代表的な病気の1つです。
遠視(近くが見えにくい)を始め、目の筋肉や神経の異常、他の目の疾患や外傷などが原因として挙げられます。
子どもの斜視は目の方向が揃わないという外見上の問題だけでなく、両眼でものをみる力(=両眼視機能)の発達に影響するため、早期の治療が大切になります。

斜視の種類

斜視は片方の目が向く方向によって「内斜視」「外斜視」「上斜視」「下斜視」の4つに分けられます。

斜視の治療

斜視の種類や程度、年齢によって「メガネ、コンタクトレンズによる矯正」、「プリズム処方」、「手術」の大きく3種類の治療法に分かれます。

メガネ・コンタクトレンズによる矯正

斜視の原因である遠視をメガネ・コンタクトレンズの装用によって矯正することで、斜視が改善される場合があります。

プリズム処方

メガネに「プリズム」という特殊なレンズを入れ、光を屈折させることで、正常な目と同じような見え方になるように矯正します。あくまでも両目の視機能を保つための方法で、斜視そのものを改善することは難しいです。

斜視手術

手術が必要と医師によって判断された場合、手術によって外眼筋(目を動かすときに使う筋肉)の付いている位置を調整することで、斜視による目のズレを正しい位置に戻します。小学生までは全身麻酔による手術になりますので、入院が必要となります。基本的には片眼のみの筋肉を1〜2つ手術によって調整しますが、斜視の程度によっては両眼の手術を行うこともあります。

弱視

弱視とは、メガネやコンタクトレンズを装用した時でも視力が1.0未満となり、矯正しても視力が十分に得られないことです。子どもの視力は出生後から9歳ごろにかけての期間に、モノを見る行為の繰り返しによって発達していきます。しかし、この発達期間に何かしらの原因で視機能の発達が阻害されてしまうと、矯正しても視力が改善されない「弱視」と診断されます。

弱視の種類

正常に視力が発達しない原因には主に以下の4つがあります。

屈折異常弱視

近視・遠視・乱視などの「屈折異常」が原因によって、両目の視力が正常に発達しない弱視です。中でも遠視が原因となることが多いですが、強い近視や乱視によっても起こることがあります。

不同視弱視

左右で視力に差が現れ、視力の良い方の目でモノをみることが多くなるため、もう片方の目の視力発達が妨げられることが原因となる弱視です。モノを見るときに視力の悪い方の目を片側の目で自然と補ってしまうので、日常生活で不自由を感じないことが多いです。

斜視弱視

片眼に斜視があり、視線がズレていることが原因で発達不良となる弱視です。

形態覚遮断弱視

「先天性眼瞼下垂」「先天性白内障」などの目の病気によって、物を識別する機能を持つ「形態覚」が遮られることが原因による弱視です。

弱視の検査

弱視を診断するためには視力検査をはじめ、それぞれの種類の弱視を判別するために以下の検査を行います。

  • 屈折検査:遠視・近視・乱視などの屈折異常の有無を調べます。
  • 眼位検査:斜視の有無を診断するために片方の目にズレがないかを調べます。
  • 眼底検査:網膜や硝子体などを調べ、眼底疾患がないかどうかを検査します。
  • 両眼視機能検査:両眼で見た時の立体感などを表す視機能に異常がないかを検査します。

弱視の治療

それぞれのタイプの斜視に合わせて適切な治療を行います。

屈折異常弱視

弱視の原因となっている遠視、近視、乱視などの屈折異常をメガネやコンタクトレンズを用いて矯正します。

不同視弱視

視力の悪い方の目を矯正するためにメガネやコンタクトレンズを装用します。
また、視力の良い方の目にアイパッチをして隠すことで、悪い方の目でモノを見る訓練をします

斜視弱視

斜視の原因となっている遠視をメガネによって矯正します。
また、正常な状態の方の目にアイパッチをして隠すことで、弱視の方の目でモノを見る訓練をします。

形態覚遮断弱視

弱視の原因となっている目の病気を治療し、その後はメガネによる矯正や弱視を改善するための訓練を行います。

近視

近視とは、眼球が前後に長い(角膜と網膜の距離が長い)ため、目の中に入ってきた光が水晶体による屈折で、網膜よりも手前で像を結んでしまっている状態です。この状態によって近くのものは見えやすいですが、遠くのものがはっきり見えなくなります。

子どもの近視には、両親が近視による「遺伝的要因」と生活環境による「環境的要因」の2つに分けられます。
近年ではスマートフォンの普及により、勉強や読書以外でも子どもが近くを見る時間が多くなり、野外での活動機会も減り、近視が進行しやすい環境下にあるといえます。

近視の中で、他の目の病気がなく、視力矯正によって1.0以上の視力が得られる場合は「単純近視」、目の奥にある「網膜」や「視神経」に以上がある近視の場合は「病的近視」の2つに分類されます。近視が進行することによって、病的近視を引き起こす可能性が高くなり、病的近視を発症すると一度失った視機能の回復が見込めなくなります。

子どもの近視の症状・行動

子どもは自身の視力低下に気づいてないことが多いので、保護者による異常の発見が大切になります。
学校検診の視力検査によって近視が判明することが多いですが、ご家庭内でも以下のようなお子様の近視のサインが現れます。

  • テレビへの距離がいつもより近い
  • モノを見るときによく目を細める
  • 明るいところで眩しそうにしている
  • モノを見る際にあごを上げたり、下げたりしている
  • 片目をつぶってものを見ている

など

近視の予防

普段の生活の中で、お子様の近視を予防するためには以下のような方法があります。

  • 外での活動を増やす
  • 近くのモノを見る時の正しい姿勢を正す
  • 部屋を明るくする
  • 目を十分に休ませる
  • 早寝早起きを心がける

 

先天性鼻涙管閉塞

鼻涙管は、鼻腔から目の下の涙袋につながる管で、涙を排出するために必要な通り道です。
先天性鼻涙管閉塞症とは、生まれたときから鼻涙管が閉じている状態のことを指します。
鼻涙管が閉じていると、涙がうまく排出されずに目にたまり、目やにが出たり目が充血したりすることがあります。
先天性鼻涙管閉塞は、1歳までの成長に伴って自然に治ることがほとんどですので、目薬によって経過観察を行いますが、重度の場合には手術が必要になることがあります。

3歳児眼科検診

子どもの視機能は生まれてから3歳ごろまでに急速に発達し、9歳ごろには発達が止まって、生涯の視力が決まると言われています。
この期間に異常があると、発達不良や視力が十分でないまま発達が止まってしまい、その後の人生で必要な視力を得ることがないまま発達期間を終えてしまいます。
そのため、生まれてから初めて視力を検査する「3歳児眼科検診」は、視力の発達不良(弱視)や目の病気を早期に発見して治療をするための重要な機会となります。
当院では「3歳児眼科検診」に力を入れています。

記事執筆

眼科医 吉田 稔

日本眼科学会 眼科専門医

大阪の多根記念眼科病院で長年従事し、白内障手術、緑内障手術、網膜硝子体手術、レーシック(LASIK)やICL(眼内コンタクトレンズ)などの屈折矯正手術、角膜移植などの眼科手術に対して幅広い知見と執刀経験を持ちます。
現在、医療法人ひつじ会 よしだ眼科クリニックの理事長として地域医療に貢献。多数の眼科手術を手掛けます。

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